―歯周病って、単に歯ぐきから血が出るだけの事じゃないんですか??

歯周病が悪化するのを放っておくとどういうことが起きるか?
全身状態が悪くなる・・・例えば糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、といった生活習慣病が引き起こされたり、妊娠している方の場合では低体重児出産などが起きてきます。

―口の中の話なのに、全身に関係あるんですか??

はい。全身の健康に関してはお医者さんの領域なイメージが一般的ですが、歯医者がかかわっている部分も実は大きいんです。
例えば禁煙外来、本当は歯医者でも進めたいくらいです。

―歯にヤニが付くから?ですか?

それもありますが、歯周病を憎悪(ぞうあく)させるので(煙草に含まれるニコチンが歯ぐきの毛細血管を収縮させるから)治療の一つとして禁煙外来をお勧めしたいところです。
歯周病は様々なリスクを増やすんです。

でも歯周病の治療は何で大事?どうして治さなきゃいけないのか?が分からないと、治療を頑張れませんよね。

―歯周病の治療、何で大事なんですか?

このホームページを見てくれた方が、たとえうちの診療所にに来なくても何か一つでも健康のヒントを受け取って帰れるか、「口の中の状態が悪かったら、こういうことがあるんだな」と知ってもらうことも大事な治療の一環だと思います。

歯周病の治療をすれば糖尿病や脳梗塞などのリスクも低くなり、健康寿命が伸ばせるんです。
結果として、寝たきりの予防になることもあるんです。

―(納得)先生の頭の中では、歯医者さんと床屋/銭湯は同列なんですね。

それくらい敷居を低くして、行くとスッキリさっぱりするところだと知ってほしいんです。
おいしく食事が出来ることは、とても大事です。
満足感だけでなく、しっかり噛めれば消化吸収にもいい影響があります。

入れ歯を入れても食べられない、よく噛めないと、意味がない。虫歯は治っても、歯周病で歯がグラグラで食べられなかったら、意味がない。
ちゃんとご飯が食べられたら健康になるんです。

―そもそもの質問なんですけど、どうして歯周病と脳卒中(脳梗塞)・心筋梗塞・糖尿病・低体重児出産などが関係あるんですか?

歯と歯ぐきの境目を「歯周ポケット」といいますが、歯周病の細菌はそのポケットの中にいます。
これは「嫌気性菌(けんきせいきん)」といって「空気を嫌う菌」なので、歯周ポケットの深いところで歯周病菌は増殖します。

―・・・想像すると気持ち悪い。(汗)

出血をそのまま放置すると、歯肉が赤くなって、腫れてきます。

―こ、怖い。

さらに歯周組織を破壊、炎症を起こします。炎症で作られる「毒」が、歯肉の血管から全身に回ります。

―こ、怖いです・・・。

歯周病によって作られた炎症性の物質は、インスリンの働きを弱めるから糖尿病が悪化するんです。
また、歯周病菌が血管に入ると動脈硬化を促して、血管の中にプラークが出来るんです。

―え?血管の中にプラーク?

歯垢(しこう)もプラークですが、血管の中の粥状(じゃくじょう)の脂肪性沈着物のこともプラークといいます。
当然、血管内の血の通り道は細くなます。
歯周病の人は、そうでない人の2.8倍脳梗塞になりやすいと言われています。

参考:https://www.jacp.net/perio/effect/

―じゃあ、早産は何の関係があるんですか?

陣痛は子宮を収縮させる「プロスタグランジン」の分泌が高まって起きます。
炎症で増えた「サイトカイン」がこの「プロスタグランジン」の分泌を促すのです。

―炎症があることで、子宮収縮が進んじゃうんですね?

そうなんです。
分娩時のように子宮の収縮が促されて、早産が引き起こされてしまうのです。
歯周病による早産の確率は、タバコやアルコール、高齢出産よりも高い数字なんです。

―妊娠している女性は歯周病を治療した方がいいのですね。

併せて、妊娠すると「エストロゲン」という女性ホルモンが多く出て、それが歯周病菌の増殖を促しちゃうんです。
妊娠後期には通常の時の10~30倍増えるから、そもそも妊娠している女性はは歯周炎にもなりやすい。

―・・・安全な出産のために、赤ちゃんのために、妊娠中から歯周病の治療することは良い選択なんですね。

どうして歯周病が怖いかが分かるだけでも、歯医者さんにかかるモチベーションは上がると思うんです。そういうことを知ってもらうことも歯医者の大事な仕事だと考えています。

入れ歯を作る時も、口の中のコンディションを整えないとうまくフィットしません。
なので、口全体をケアします。

当院では、お口の歯周病菌を減らす「歯周内科」を行っています。

―分からないことまだあるんですが、教えてもらえますか?

はい、そういうことを知ってもらうことも大事なので、ぜひ歯医者に足をお運びください!