歯周病治療

歯周病は以前「歯槽膿漏」と呼ばれていました。
具体的には、歯に付いた細菌性プラークが引き起す「感染症」です。
(歯ぐきのの炎症は歯肉炎といいます)

歯周病は、歯を支えている骨にまで影響を及ぼします。
現代人の多くは少なからず歯周炎になっています。

歯ぐきから血が出るのは歯周病のサイン

「歯磨きのたびに歯ぐきから血が出る」
「歯がグラグラしてきた」
「歯ぐきが痩せてきた」

痛くはないので放置しがちですが、これが歯周病の症状です。
歯周病は7割以上の成人がかかっていて、歯を失ってしまう原因の1位であるだけではなく、全身に様々な悪影響を及ぼします。

全身に深刻な影響を及ぼす歯周病菌

「え?歯周病って単に歯ぐきから血が出るだけじゃないの?口の中だけの話じゃないの?」
いいえ、全身の影響を及ぼします。

歯周病菌が増えると、唾液や血液の中に入り込み体のあちこちに飛び火し、全身に深刻な影響を及ぼします。
高齢者に多い嚥下性肺炎、敗血症、心内膜炎、早産、低体重児出産などとの関連性があります。

これまでの治療はどうして治らなかったのか?

スタンダードな治療は、歯周病の原因の細菌を、人間が「器具」を使って取り除くものです。
歯みがきで細菌の数を減らし、歯石取りで細菌のすみかを破壊し、外科手術で歯ぐきを骨から剥がして歯ぐきの奥の奥まで菌を追いつめるという3つが主な治療法です。

それに対して当院が行っている「歯周内科」の治療法は歯周病菌を「お薬」を使ってやっつけようという方法です。

歯周病は早くから微生物による感染症であることが知られていました。
これまで人間の手を使った様々な方法で菌を駆逐しようと、頑張ってきました。
しかし、どんどん歯が抜けていくのをなかなか防ぐことができませんでした。

歯周病に関連する菌をほぼ全滅させるために、有効な薬の組み合わせや使用法が分かってきたのです!!
ようやく歯周病も薬を用いて治すところまでたどり着いたのです。
詳しくはインタビューをご覧ください。
インタビュー

従来の治療と歯周内科の違い

歯周病は感染症です。
歯周病の原因となる菌がお口の中にいなければ、歯周病は起こりません。
感染症は「感染」と「発病」の2つの段階に分かれています。
感染したからといって、すぐに困ったことが起こるわけではありません。
感染してからある程度時間が経ってから発病します。

「未感染」→「感染・潜伏」→「発病」

従来の「歯みがき」「歯石取り」「外科処置」は菌の数を減らすことを主な目的としています。
菌を減らすことはできても、消し去ることはできません。
つまり、「潜伏」にまで持っていくことはできても、「未感染」の状態に持っていくことは不可能だったのです。

「感染・潜伏」の状態は、いつ「発病」の状態になってもおかしくありません。
そして現実に何度も再発を繰り返し、たくさんの歯が失われてきたのです。
「歯周内科」の治療は「感染・潜伏」「発病」いずれの状態であっても「未感染」の状態にまで持っていくことができます。
そこが「歯周内科」のすばらしいところなのです。

歯周病の検査

「具体的にどんなことをするの?」

STEP1 診査・診断(顕微鏡観察/3,600倍)

初診や検診で、歯垢を取り、特殊な顕微鏡を使って口の中の菌を観察します。
「スピロヘータ類」がいるかどうかが感染の目印になります。
「感染・潜伏」「発病」を診察します。

先生コメント

当院の状況を見ると、スピロヘータ類が全くいないという人は全体の10%ほどで、あとの90%程度の人はスピロヘータ類を持っています。
スピロヘータ類が多い人は歯ぐきの状態が大変悪く、腫れ・出血・口臭・歯のぐらつき等の症状が出ています。

STEP2 プラークコントロール

■スピロヘータ類が全くいない人 (未感染)
症状が出る事はほとんどないので、歯周内科の治療は行わず、虫歯の予防も兼ねて定期的な歯の徹底クリーニングを行います。

■スピロヘータ類がわずかにいる人 (感染・潜伏)
何かのきっかけでスピロヘータ類の数が激増すると、歯周病が「発病」します。
主なきっかけは加齢や病気による免疫力の低下です。
爆発がおこる年齢の目安は45歳です。

先生コメント

ちょうどガンの好発年齢の始まりと一致していますね。
免疫力がガクンと落ちる時期なのでしょう。
こういう患者さんには「発病」の状態に移行しないよう、定期的な菌の観察を行います。

■スピロヘータ類が爆発的に増えている人 (発病)
スプロへータ類とその他の菌類で歯ぐきに腫れ、歯を支える骨がどんどん溶けます。
非常に危険な状態ですので速やかに「歯周内科」の治療を行います。

先生コメント

飲み薬と塗り薬の2種類の抗生剤を1週間使用してもらいます。
途中で何度か位相顕微鏡でお薬の効き具合を確認します。
お薬の作用を阻害するタバコは1週間厳禁です。
スピロヘータ類の全滅が確認できたら治療は終了です。
その後、再発を防止するために定期的な菌の観察を行います。

■各状況に共通する内容
歯と歯肉の周りについたプラークや歯石などを取り除き、歯のお掃除をします。
歯ブラシ指導や歯間ブラシ指導も行います。
2度3度繰り返し歯のお掃除をしても炎症がとれない場合には、ご高齢の方など体に負担がかからないように、なるべく外科的処置と薬を併用して治療をしていきます。
薬は体に害とならないように考慮して使用します。
経過がよくない時は、外科処置を薬を併用することもあります。

先生コメント

この治療は現在まで「約10年間/1,000人以上」の歯周病(歯槽膿ろう)改善に取り組み、患者さんが満足する結果を出してきました。
例えば、通常抜歯するであろう歯を、抜かずに済んだ症例や、グラグラであった歯がしっかりして、咬める様になった症例などたくさんあります。

その後、歯肉が改善された場合は、定期的なメンテナンスをお勧めしています。
歯周病はこれで終わりというものではなくて、一生自分自身に降りかかってくる病気です。

薬の効能

  • ブラッシングによる出血がなくなる
  • 歯肉の赤みがなくなる(赤から薄ピンクに)
  • 腫れが引き、歯肉が引き締まる
  • 痛みがなくなる、沁みなくなる
  • よく噛めるようになる
  • 口臭がなくなる
  • 口腔内のねばつきが無くなる

STEP3 メンテナンス

スピロヘータ類を含む歯周病を引き起こす菌(悪玉菌)がほぼ全滅し、病原性のない菌(善玉菌)がたくさんいる状態が、理想的な状態です。
その状態で安定すれば「未感染」と同じ状態になったと言えます。

ただ、それで安心してはいけません。
歯や歯のかぶせ物は非常に複雑な形をしており、お薬がしみこなまい部分にわずかに菌が残っていて再発することがあります。
ごくわずかな数の悪玉菌であっても、そのまま何年も放置すると分裂して増えてしまいます。
そうさせないためには定期的なプロフェッショナルクリーニングをしてごくわずかに残った悪玉菌を退治して、再発を防止できるのです。

歯周病Q&A

Q. 歯周病の原因はなんですか?

A. このようなステップで、歯周病になります。

  1. 歯と歯の間や、歯と歯ぐきの間に食べ物のカスが残っていると、それを栄養源として細菌が増殖し、歯垢(プラーク)という細菌の塊が歯の表面にへばりつきます。
  2. 放っておくとプラークは石のように硬い歯石になり、さらにプラークがつきやすくなります。
  3. プラークの中の歯周病菌が歯ぐきに炎症を起こし、歯周ポケットをつくります。

先生コメント

歯周病菌は空気を嫌う菌(嫌気性菌:けんきせいきん)なので、空気の少ない歯周ポケットに集まります。炎症がすすんでポケットが深くなると顎の骨の一部である歯槽骨が破壊され始めます。

Q. 歯周病を悪くする要因はなんですか?

A. タバコを吸う人は、吸わない人よりも歯周病を引き起こしやすく悪化のスピードが早いため、治療してもなかなか改善しません。
ニコチンが血流を悪くするため歯ぐきに酸素や栄養が行き渡らず、歯ぐきの抵抗力が弱まります。

Q. 歯周病は口以外の病気と関係がありますか?

A. 歯や歯茎の健康は口の中だけでなく全身と関係しています。
口の中には何百種類という細菌が生息していますが、口から体の中に入り込むとさまざまな病気を引き起こすことが知られています。
たとえば心臓病、肺炎、糖尿病、早産などです。
歯周病は歯周病菌の塊であるプラークや歯石による歯ぐきの炎症ですが、たかが口の病気とあなどっていると後悔することになるかもしれません。

Q. 歯周病の予防はどうすればよいのですか?

A. 「食べたら磨く」という習慣をつけることが大事です。
その際、正しいブラッシングでプラークを取り除き、歯周ポケットをつくらないようにします。
正しいブラッシング指導は当院で行っていますのでぜひご相談ください。
また、不規則な食生活、偏食、喫煙などの生活習慣を改善することで抵抗力が高まり歯周病の悪化を防ぐことができます。

Q. 歯と歯ぐきのメンテナンスは定期的に受けた方がよいですか?

A. 自分で出来る歯周病予防はブラッシングですが、物理的に限界があります。
磨き残しのプラークはいずれ小さな歯石となって、ご自身のブラッシングでは取り除くことができなくなります。
歯周病の本格的な予防には歯科医院で年3~4回の定期的な検診をすることをおすすめします。